問 8
Aさん(54歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。X社は、近年、売上金額・利益金額ともに減少傾向にある。Aさんは、今後の保険料負担も考慮し、下記<資料>の生命保険契約を見直したいと考えている。
そこで、Aさんは、生命保険会社の担当者であるファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<資料>X社が現在加入している生命保険の契約内容
保険の種類 : 5年ごと利差配当付定期保険(特約付加なし)
契約年月日 : 平成14年11月1日
契約者(=保険料負担者) : X社
被保険者 : Aさん
死亡保険金受取人 : X社
保険期間・保険料払込期間 : 95歳満了
死亡保険金額 : 1億円
年払保険料 : 200万円
現時点の解約返戻金額 : 2,200万円
65歳時の解約返戻金額 : 4,500万円
※保険料の払込みを中止し、払済終身保険に変更することができる。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
MさんのAさんに対するアドバイスに関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
- 「毎年の払込保険料を軽減しつつ、当面の死亡保障を確保するのであれば、保険期間が短い定期保険に見直す方法があります。ただし、保険期間が5年・10年等の短い定期保険は、現在加入している生命保険のような解約返戻金(返戻率)は期待できません」
[解答解説] ◯
適切である。
現在加入している生命保険は定期保険だが、保険期間が長期の長期平準定期保険であるため、解約返戻金が発生する。これに対し、保険期間の短い定期保険は、解約返戻金はない。 - 「現在加入している生命保険を解約せず、払済終身保険に変更することも検討事項の1つとなります。将来、Aさんが勇退する際に、契約者をAさん、死亡保険金受取人をAさんの配偶者等に名義変更し、当該払済終身保険契約を役員退職金の一部として現物支給することができます」
[解答解説] ◯
適切である。
保険料負担を抑えたい場合、払済終身保険に変更することも一つである。契約者をX社からAさんに変更し、Aさんが解約すれば解約返戻金を受け取れるため、役員退職金の一部に充てられる。 - 「現在加入している生命保険を現時点で払済終身保険に変更した場合、変更した事業年度において多額の雑損失が計上されます。したがって、変更した事業年度の経常利益が大きく減少する可能性があります」
[解答解説] ×
不適切である。
払済終身保険は、その時点での解約返戻金を基に終身保険にかえ、その後の支払いをなくす方法である。借方に解約返戻金額を保険料積立金として資産計上する。一時払い終身保険契約のとき、保険料を借方に保険積立金として資産計上するのと同じである。次に、長期平準保険は、前半6割の期間では保険料の2分の1を前払保険料として資産計上している。今回の契約変更により、貸方に前払保険料を計上し、保険積立金と前払保険料の差額を雑収入として貸方に計上する。
具体的には、まず、長期平準保険かどうかを判断する必要がある。
長期平準保険:保険期間満了の時における被保険者の年齢が70歳を超え、かつ、当該保険に加入した時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が105を超えるもの
加入時の年齢 40歳 + 保険期間55年×2 = 150歳 > 105
よって、長期平準保険である。
そして、長期平準保険は、前半6割の期間では2分の1を資産計上し、現時点ではこの前半6割に該当する。
年払保険料200万円×1/2=100万円 よって、100万円は前払保険料(資産)、100万円は支払保険料(費用)となる。
<契約初年度の経理処理>
支払保険料 100万円 | 現金・預金 200万円
前払保険料 100万円 |
14年後の平成28年には、前払保険料は1,400万円となっている。
<契約変更時の経理処理>
保険積立金 2,200万円 | 前払保険料 1,400万円
| 雑収入 800万円
ただ、試験ではここまで求められていない(時間がかかってしまう)。契約変更時には、保険積立金と前払保険料の差が、雑収入か雑損失に計上されるため、「多額」の雑損失が計上されることはない。また、解約返戻金をもとに契約するため、新たな保険料の負担はない。
[解答] ① ◯ ② ◯ ③ ×
[補足]
解答解説