2級FP過去問解説(個人資産)2020年1月【問14】不動産賃貸業の法人化

【第4問】 次の設例に基づいて、下記の各問(《問10》~《問12》)に答えなさい。


Aさん(73歳)は、父親から相続した先祖代々の土地で不動産賃貸業(個人事業)を営んでいる。Aさんの年間の不動産収入は4,000万円であり、所得税および住民税の負担が大きいと感じている。現在、Aさんは、X社(不動産保有会社)を設立し、賃貸不動産をX社に売却して、不動産賃貸業を法人化することを検討している。
Aさんは、現在、妻Bさん(68歳)および長女Cさん(44歳)と自宅で同居している。長男Dさん(41歳)は、県外の企業に勤務しており、故郷に戻って来る予定はないようである。
Aさんは、不動産賃貸業を同居する長女Cさんに引き継がせたいと思っているが、大半の財産を長女Cさんに相続させた場合に、長女Cさんと長男Dさんとの間で争いが生じるのではないかと不安を感じている。
<Aさんの推定相続人>
妻Bさん :専業主婦。Aさんと自宅で同居している。
長女Cさん:Aさんの不動産賃貸業を手伝っている。Aさん夫妻と同居している。
長男Dさん:会社員。妻と子2人でマンション(持家)に住んでいる。
<Aさんの所有財産(相続税評価額)>
1.現預金 :1億2,000万円
2.自宅
①敷地(240㎡) : 7,000万円
②建物 : 3,000万円
3.賃貸マンション甲
①敷地(300㎡) : 1億円
②建物(築30年) : 7,000万円
4.賃貸マンション乙
①敷地(400㎡) :1億2,000万円
②建物(築25年) : 8,000万円
合計 :5億9,000万円
※自宅および賃貸マンションの土地は「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額である。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問14

不動産賃貸業の法人化に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

  1. 「不動産賃貸業を法人化し、AさんがX社から役員報酬を得ることになれば、給与所得控除額の適用があります。また、妻Bさんや長女CさんがX社の役員になり役員報酬を得ることで、所得の分散を図ることもできます」
  2. 「Aさんが賃貸マンションの建物だけをX社に移転した場合、権利金の認定課税を回避するためには、X社はAさんと連名で『土地の無償返還に関する届出書』を法務局に提出する必要があります」
  3. 「賃貸マンションの土地と建物をAさんからX社に譲渡した場合、先祖代々の土地の取得費が小さければ、譲渡所得の金額が大きくなり、Aさんに多額の所得税が課される可能性があります」


[正解]
 ②× ③

[解説]

  1. 「不動産賃貸業を法人化し、AさんがX社から役員報酬を得ることになれば、給与所得控除額の適用があります。また、妻Bさんや長女CさんがX社の役員になり役員報酬を得ることで、所得の分散を図ることもできます」
  2. [解説]
    適切である。個人事業主の場合、不動産賃貸業からの収入は事業所得となり、給与所得に適用される給与所得控除額を適用することはできない。不動産賃貸業を法人化することで、役員報酬を経費とすることができ、Aさんは給与所得控除額を適用することができる。妻Bさんや長女Cさんにも役員報酬を支払い、経費にすれば、節税効果があり、相続を考えた場合、役員報酬という形で長女Cさんに所得を分散できれば、相続時の課税価格を減らすことができる。

  3. 「Aさんが賃貸マンションの建物だけをX社に移転した場合、権利金の認定課税を回避するためには、X社はAさんと連名で『土地の無償返還に関する届出書』を法務局に提出する必要があります」
  4. [解説]
    不適切である。Aさんが賃貸マンションの建物だけをX社に移転(売却)した場合、土地部分はAさん所有のままなので、X社はAさんの土地を借りることになる。この土地の貸し借りについて、X社が将来その土地を無償で返還することを記載した「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出すれば、借地権について税金はかからなくなる。

  5. 「賃貸マンションの土地と建物をAさんからX社に譲渡した場合、先祖代々の土地の取得費が小さければ、譲渡所得の金額が大きくなり、Aさんに多額の所得税が課される可能性があります」
  6. [解説]
    適切である。先祖代々の土地の場合、取得費が分かっていても小さい可能性があり、譲渡価格から差し引く金額が少ないことから譲渡所得の金額は大きくなるため、Aさんは譲渡所得について多額の所得税が課せられる可能性がある。


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