【第5問】 次の設例に基づいて、下記の各問(《問13》~《問15》)に答えなさい。
非上場会社である株式会社X社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であるAさん(75歳)は、自宅で妻Bさん(70歳)および長男Cさん(45歳)家族と同居している。Aさんは、妻Bさんに自宅および相応の現預金等を相続させ、X社の専務取締役である長男CさんにAさんが100%所有するX社株式およびX社本社敷地・建物を承継する予定である。
長女Dさん(42歳)は、会社員の夫、2人の子(孫Eさん14歳・孫Fさん12歳)と分譲マンション(夫所有)に住んでいる。長女Dさんからは「子どもの教育資金や住宅ローンの返済で家計に余裕がない。資金を援助してほしい」と頼まれている。Aさんは、この機会に、長女Dさんに対して生前贈与を実行しようと考えている。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
《問15》
Aさんの相続等に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
- ① 「遺産分割をめぐる争いを防ぐ手段として、遺言の作成をお勧めします。法務局において、自筆証書遺言を保管する制度が始まっています。この制度を利用した場合、家庭裁判所の検認の手続は必要ありません」
- ② 「遺言により、相続財産の大半を妻Bさんおよび長男Cさんが相続した場合、長女Dさんの遺留分を侵害するおそれがあります。仮に、遺留分を算定するための財産の価額を6億円とした場合、長女Dさんの遺留分の額は1億5,000万円となります」
- ③ 「長男CさんがX社本社敷地を相続により取得し、当該敷地について、特定同族会社事業用宅地等に係る小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けた場合、当該敷地(相続税評価額6,000万円)について、相続税の課税価格に算入すべき価額を1,200万円とすることができます」
[正解]
①〇 ②× ③×
- ① 「遺産分割をめぐる争いを防ぐ手段として、遺言の作成をお勧めします。法務局において、自筆証書遺言を保管する制度が始まっています。この制度を利用した場合、家庭裁判所の検認の手続は必要ありません」
- ② 「遺言により、相続財産の大半を妻Bさんおよび長男Cさんが相続した場合、長女Dさんの遺留分を侵害するおそれがあります。仮に、遺留分を算定するための財産の価額を6億円とした場合、長女Dさんの遺留分の額は1億5,000万円となります」
- ③ 「長男CさんがX社本社敷地を相続により取得し、当該敷地について、特定同族会社事業用宅地等に係る小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けた場合、当該敷地(相続税評価額6,000万円)について、相続税の課税価格に算入すべき価額を1,200万円とすることができます」
[解説]
適切である。法務局の、自筆証書遺言を保管する制度を利用した場合、家庭裁判所の検認の手続は不要である。
[解説]
不適切である。長女Dさんの遺留分割合は、1/8(1/4 × 1/2)である。6億円 × 1/8 = 7,500万円が遺留分の額となる。
[解説]
不適切である。特定同族会社事業用宅地等に係る小規模宅地等については、400㎡までの減額割合が80%である。X社本社敷地は600㎡なので、
6,000万円 × 400/600 × 0.2 + 6,000万円 × 200/600
= 800万円 + 2,000万円
= 2,800万円
よって、、相続税の課税価格に算入すべき価額は2,800万円である。計算しなくとも、1,200万円だと6,000万円全額を80%減額していることに気づけば誤りだと判断できる。